飯野賢治さんの遺言。
任天堂ダイレクトを何気なくみていたら、いきなり「飯野さん亡くなった」というコメントが流れてきて、何かの冗談かとその時はたいして気にも止めなかった。
なぜなら少し前、飯野さんのTwitterをまとめてチェックしたばかりだったからだ。最近も更新されており、ボストンにいること。その道中リスをたくさん見かけて可愛い:)というような和むツイートをしていた。
仕事のほうも飯野さんの昔からの親友、伊藤穰一さんを頼りにMITメディア・ラボで良い人がいないか探しにいっているようで、何かまた面白いことを始めようとしているというような期待をもたせるものだった。
こんなツイートが最近されていて、いきなり亡くなるとはとても信じられなかった。
任天堂ダイレクトの放送内容もちょうど、以前に飯野さんが作ったエネミー・ゼロ的な世界観のゲームが流れていたので、ゲームの世界で存在感が弱くなった飯野さんを皮肉っているのかな?ぐらいにしか思わなかった。
それでも何かひっかかる気持ちがあり一応「飯野賢治」と検索してみたら、高血圧性心不全で20日に亡くなったというニュースがヒットしてしまった・・・。
「朝日新聞デジタル:ゲームクリエーター飯野賢治さん死去 「Dの食卓」作者 - おくやみ」
http://www.asahi.com/obituaries/update/0221/TKY201302210302.html
あまりにショックで、家族がまわりにいたけど、僕は何の反応しなかった。ただ黙って、リビングルームをあとにして風呂場で泣いた。
僕にとって「飯野賢治」という存在は、父親以上にいろいろと教えてもらった人だ(人生について実父に教えてもらったことが「体力が大事」ぐらいしかないから(笑)比べるのもあれだけど)。おもしろい人や良い本、音楽、映画を知るきっかけの人だった。
飯野さんがやっていたナイトワープENO@HOMEというラジオ番組は本当に毎回おもしろかった。
「ナイトワープ ENO@HOME/(ゲスト 平沢進) ‐ ニコニコ動画(原宿)」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4235562
いろいろおもしろい人や作品を飯野さん経由で知ったと思うけど、何より飯野さん自身の発言が一番おもしろかった。知的刺激があって愛情深くユーモアやバカ話で笑わせてもくれる。
Youtubeにあった動画も見なおしてみたけど、本人も言っているように、同じ哲学のテーマを扱っていても、この本を書いている人は人気ある教授なんだろうなと。そういう人気教授にならないといけないと。まさに飯野賢治は僕が憧れる人気教授だった。
http://www.youtube.com/watch?v=cXpb4Um4B2I
飯野さんは頭がよくて愛情深くてユーモアもあるから仲間にも恵まれているけど、どこか欠如していて完璧な人ではなくて。深い狂気の世界をもっている。けれど最後は全てを乗り越えて、愛に向かう。
「エネミー・ゼロ」「D2」とかデジタルの悲劇とか地球規模のテーマを扱ってはいるけど、大筋はラブロマンスのゲームだった。そしてゲーム=飯野賢治だった。
そして僕はゲーム時代の申し子で、飯野チルドレンの一人なのだ。
だから飯野さんが息子さんに向けて原発について書いたブログの記事、そしてその記事をもとに書籍化され最後の著作となった「息子へ。」は僕にも書かれたもの、いや今、日本に生きる人たち、また未来の息子たちへ書かれた、飯野さんの遺言でもあると思う。
パパはね、日本が変わるタイミングだと思っているんだ。
日本は変わる。
やっと大人になる。
本当の民主主義が、やってくると思っているんだ。
お前を含めて、みんながいま、考えれば。
「eno blog: 息子へ。」より引用